北朝鮮 ICBMミサイル発射と核実験中止を決定 核実験場も破棄


画像引用:時事通信

21日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)の報道によると、20日に開かれた北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会において、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長が核実験とICBMミサイル発射実験の中止と核実験場の閉鎖を決定したことが分かりました。

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過去6回の核実験

北朝鮮は2006年から2017年まで合計6回もの核実験を実施しており、2017年に行われた実験はは過去最大といわれる大規模なものでした。実験後北朝鮮からは「大陸間弾道ミサイル搭載のため、水爆実験に完全成功した」とのコメントが出され、水爆による地下核実験実施を認めています。一連の行為は世界中から非難を浴び、国連の安全保障理事会はこの行為に対し過去10回以上経済措置を課しています。

経済制裁の種類

経済制裁とは、軍事的な圧力ではなく、経済の力で制裁を加えるという行為です。対象国への石油の輸入制限や貿易の制限などさまざまな種類がありますが、2017年に北朝鮮に対して国連の安全保障理事会が採択した経済制裁の主な内容は以下の通りです。この時は議長国日本をはじめ、北朝鮮と親密な関係だと言われている中国やロシアを含むメンバー国15か国の全会一致で採択されました。

決議第2379号: 2017年12月採択
▼灯油やガソリンなど石油精製品の北朝鮮への輸出を現在の年間およそ450万バレルから、来年1月以降、年間50万バレル以下と90%近く削減。前回9月の安保理決議による、石油精製品に対する制限を大幅に強化していき、来年1月1日から北朝鮮がほとんどの石油精製品を輸入できないようにすることを目指す。

▼北朝鮮からの食品、機械、電気機器、木材の輸入と北朝鮮への産業機械や運搬用車両の輸出を全面的に禁止。

▼北朝鮮が海外に派遣している労働者の収入を核やミサイル開発に充て続けていることを懸念するとしたうえで、決議が採択された日から2年以内に原則、すべての労働者を本国に送還。送還の期限をめぐっては、草案の段階では「1年以内」とされていた。しかし、北朝鮮の労働者を多く受け入れているロシアの要求を受け入れて「2年以内」に修正。

▼決議違反の疑いがある船舶について国連加盟国の港では拿捕(だほ)や臨検、差し押さえの義務があるとしたうえ、領海内でも拿捕することを認めると定める。

▼北朝鮮の人民武力省の1団体と銀行関係者19人を新たに資産凍結の対象に指定。

▼アメリカが中国に強く迫ってきた中国から北朝鮮への原油の供給停止には踏み込まず。決議では、原油の供給について、年間400万バレルもしくは52万5000トン以下に制限するとして初めて数量の上限が明記されたものの、これは中国からの年間供給量とほぼ同じ量であることから、前回9月の決議と同様、現状維持を認める内容に。

▼一方で、北朝鮮が新たな核実験や弾道ミサイルの発射を行った場合、安保理は、北朝鮮への石油供給をさらに制限する措置を取るという表現を初めて明記。
引用:NHK news web

大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射も中止


画像引用:毎日新聞
 
今回の朝鮮労働党中央委員会総会では、21日から大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射の中止も発表されています。
北朝鮮は1993年から断続的にミサイルの発射実験を続けていて、軍事目的の準中距離弾道ミサイルのノドンやスカッド、中距離弾道ミサイルのムスダンや火星12号などのミサイルが実験発射されています。2017年11月にはアメリカ全土が射程距離に収まるとされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射、実験後「成功した」と発表しています。発射されたミサイルは高度4000キロをはるかに超える高さまで到達したと言われ、青森県の西方約250キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下したことが確認されています。

核実験場の破棄も決定


画像引用:jiji.com

さらに北朝鮮は、北朝鮮北部にある核実験場の破棄も決定しています。全6回の核実験全てが行われたとされる豊渓里(プンゲリ)核実験場の破棄は大きな進歩です。アメリカ・トランプ政権は「完全かつ検証可能、不可逆的な非核化」を掲げていて、核実験場廃棄も強く訴えていました、今回の決定で大きな目的である核計画全体の放棄の実現が現実のものとなりつつあります。

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今後は経済中心、新しい戦略へ

北朝鮮の金正恩党委員長は、「今や、いかなる核実験も中・長距離、大陸間弾道ミサイルの試射も必要なくなった」と述べ、これまで進めてきた核開発と経済建設を同時に進める「並進」路線について、「国家核兵力の建設が完璧に達成され、貫徹された」と宣言、今後は社会主義経済建設に総力を集中するとともに、朝鮮半島の平和と安定を目指し、周辺国や国際社会と緊密に連携、対話していくという新たな戦略路線への方針転換を発表しています。

並進路線とは?

「並進」路線は、2013年3月に行われた朝鮮労働党中央委員会総会で金正恩党委員長が打ちだした北朝鮮の国家基本戦略です。世襲による独裁政権が続く北朝鮮では、金正恩の祖父にあたる金日成(キム・イルソン)時代に思想面での国力強化、父・金正日時代は軍事面での国力強化を成し遂げたと言われており、正恩氏は先代が成し得た「強国達成」に経済面での強化を達成する意向を示し、加えて米国の脅威に対抗して核戦力で対抗すると主張、「国家核兵力建設の歴史的大業を完遂させる」と宣言していました。この宣言以降、北朝鮮は核実験やミサイル発射実験を繰り返し、急速に軍事力を増長させてきたのです。

限定攻撃に震えた?

国際社会から孤立状態が続いても核実験やミサイル発射を止めない北朝鮮に対して、アメリカ大統領トランプ氏は非常に強い姿勢で対峙してきました。今回の中止決定が発表される前、一部報道では北朝鮮が「4月20日に核実験を実施する」と中国に伝えており、それを知ったトランプ氏が中国の最高指導者である習 近平(しゅう きんぺい)に、「核実験をすれば、必ず限定攻撃する」と警告するよう求めたと言われています。
かつてない強気の姿勢と「限定攻撃」という警告にアメリカの本気を感じたのかもしれません。

トランプ大統領大喜び


画像引用:産経ニュース

突然の発表に世界中が驚いていますが、トランプ大統領も「北朝鮮と世界にとって非常に良い知らせだ。大きな前進だ!」と喜びのコメントを出しています。
お互いに「ロケットマン」「狂ったおいぼれ」など揶揄しあい、とても国家元首同士のやりとりとは思えない「口撃」を続けてきた二人ですが、今回の決定で6月に予定されている米朝首脳会談は多少和やかな雰囲気で話し合いが進められるのではと期待されています。

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